奨学金の合格者発表を待ってアップしようと思ってとっといたサウスケント訪問記です。ちょっと遅くなりましたがどうぞ。


10/7

さて,2度目のコネチカット州サウスケントです。

その前にハワイ島のボルケーノ(火山)で雑誌SWITCH(発売中)の撮影およびインタビュー。火山の煙を吸い込みすぎて湯あたり状態になったりもしつつ、作家の重松清さんとご一緒させていただき楽しい道中。

短すぎたハワイに未練を残しつつサンフランシスコに移動、そこで現地出版社のVIZを訪問し,スタッフの方々の暖かい歓待を受ける。大勢で食事をして親交を深めた。作品を本にして世の中に送り出してくれる仕事をする人たちとお互いの思いを話し合うことは僕にとって大事なことだ。いささか強行スケジュールではあったが来て良かった。VIZは現在アメリカ版バガボンドを刊行中で、2008年よりSDとREALも出版して行く予定。よろしく頼んます。

大陸を横断。ニューヨークJFK空港で選手らと合流し,そのままレンタカーで移動。
どんどん田舎になっていくのでメシにありつけるのかと心配しつつ(ありつけた)、真っ暗な道をひた走り、夜の11時ごろサウスケントの隣、宿泊地のケントに到着。。

今回のホテルはFife'n Drum(笛と太鼓)という名の2階建てのこぢんまりしたところ。
この町にはこのくらいのサイズのホテルがスタンダードか。前回のStarbuck Innと同規模で好きだが、ネットの環境にないのが仕事の上でちょっと困ったな・・。(最終日に突然無線LANがつながった!)
あと、バスタブの栓が壊れててクリーニングのビニールをむりやり丸め込んで栓とした。問題無し。

ハナレグミのライブのDVDを見て寝る。出張のとき持っていく何枚かに必ず入れている。
少し疲れがたまってきた身体にいい波動をもらう。

明け方に脚がつって目が覚める。今回よく脚がつる。何でだ?(追記:帰国後同じ箇所を肉離れやってしまいました。その兆候だったのか。)

 

10/8

どうしても持ってきて進めておかねばならない仕事があり,学校とのミーティングはスタッフ諸兄にお任せして午前中を部屋で仕事にあてる。

ピックアップしてもらい昼食は学校で生徒や先生皆と。今日はこれから自分の子供を通わせようかという家族に対してのオープンデイ(見学会のような感じ)で、何組かの家族も一緒。

3時半よりいよいよ練習。選手も参加する。ほかでもない、このためにここに来た。

校外の子もいて人数が多い。その分スクリメージはまとまりはなく自分を見せるため好き勝手に無理なプレイをする選手、ボールにさわれず途方に暮れる選手が混在した。

途方に暮れていたかはともかく、うちの選手は後者だった。

 

〜自分に対する反省事項〜

やることは同じバスケだとは言っても、やはり初めてのことだらけで言葉も分からないので選手はどうしていいかわからず戸惑っているように見えた。いきなりポンと放り込まれるのも経験だということは承知の上で,最低限のアドバイス(例:自分からボールをもらいにいく,日本語でもいいから声を出す、アグレッシブに,姿勢を見せる等)が出来た方がいい。

信頼できる人がいるのといないのとでは普段通りの自分を出せるかどうかに大きく差が出るだろう。あくまで今は日本から来た高校生。戸惑いが勝ちすぎてプレイに入れずノれない感じがもったいなかったし、何とかしてやりたかった。ここでの生活が始まってしまえば選手自身の問題なのは分かっているし、過保護にするつもりは毛頭ない。だが今回は2回の練習しかチャンスはない。そのたった2回のプレイでコーチにいわば見初められなくてはならない。短時間で実力を発揮できるよう、プレイする前の段階を心身ともに整える手助けをするのは自分の役目かも知れなかった。

送り出す側の自分たち自身にも経験が必要だと感じる。

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*コミュニケーション不足から、事実上PGとしてプレイしておらずボールに触る回数が少なすぎた。

*速攻時のフィニッシュ(パス)、Dが前に圧力をかけてきたときの回避の仕方など、わずかに片鱗も見せた。

*プレイするほとんどの時間を流している印象。昨夜12時間のフライトで着いたばかりで身体がきついのは分かる。ボールの違いも口にしていた。だがコートに入ったら常に勝負の姿勢を見せていかないと今後自分がきつくなる。周りの選手がどうであれ、バスケットボールに向き合う姿勢は大事だ。

今日の印象はそんなところだ。コーチは彼のことはいい選手で気に入っていると言っていた。おそらくそれは今日のプレイだけで出てくる言葉ではなかったろう。

選手本人は30%も出せなかったと言った。しかしこの中ですごいと思えるような奴はせいぜい一人か二人だとも思ったようだ。各国のトッププレイヤーが集まるアディダスキャンプや国際試合の経験、そこでの感触から得た自信を感じた。

明日は外部の選手も減り本来のチームのメンバーだけになるという。

ここでぜひともいい印象を残してもらいたい。

コート上での孤独は一時のことだ。いずれプレイで認められる。

これが俺だというのを見せてくれ。

 

10/9

この日は人生の中でも、かなり嬉しい日だった。

第一期奨学生の並里成がコーチの口から、「No question!」と言ってもらえた。合格ですか?という質問に対してだ。

今日は昨日よりも少しやりやすそうだった。全面的にやりやすいわけではまったくないが、ほんの少し,コミュニケーションをとる場面もある。

スクリメージの前に対人の練習が入ったこともよかった。声を出し、少しの時間でもチームの一員として動くことが良かった。

チームの面々も「何なんだこいつ?」から,少し胸襟を開いたくらいには近づいた気がした。

うーんまあまだ「何なんだこいつ?」だろうなあ。ポーカーフェイスだし・・。そこも面白いところではある。

そして今日のプレイの端々に心躍らされたのも事実だ。

2日間の練習ではやはり積極性を出すところまでは至らなかったし、声も、ボールのないときのちんたらとした走りもこちらの不安を誘うものだったのだが、ひとたびボールを持つとやはりレベルの高さを見せてくれる。鮮烈なパスも何本か見せた。特筆すべきは視野の広さ。コートの隅々まで見えている。それだけに相手ディフェンスがゆるくフリー(過ぎる)の味方が見えるとパスしてしまうのだろう。自分でもっと行ってもおもしろかったしそれについてはコーチも同じ思いだったようだ。

だがパスできるのは特に1オン1主体の選手の多いアメリカでは貴重な能力。コーチには重宝されるし味方も歓迎だ。その才能に疑いのないところは見せた。

コーチにはすぐにでも大学でやれると言われた。

だが170ちょっとしかないアジア人が,それも中国人ではない、日本人が、NBAを目指すのであればその条件を少しでもいいものにしておきたい。つまりただディビジョン1の大学でプレイするのではなく、どの大学かが大事になってくる。しかもそこでプレイ時間をもらえなければ意味はない。

より上を目指すためにも常にコートでは全力を出す姿勢を身につけてもらいたい。本当の一流選手は,どんなゲームであろうと力を出し惜しみしたりはしないものだ。一分一秒が、常に勝負だ。あるいは様々な条件により力を出させてもらえなかったのであれば,その悔しさを受け止め,次への糧としなくてはならない。ここは通過点であって目的地ではないからこそ。

 

小さな日本人が筋骨隆々の大男たちを翻弄する姿が明確にイメージできた。

夢はどこまでも膨らむ。

選手のそれはすでに我々の先を見ている。

今は夢をどこまでも膨らましていったらいい。そうすべきだ。

自分で天井を設定することはない。

試練はほっといても訪れる。

そのたびに身悶えしながらも全身で受け止め,やがて克服するために、自分の支えとなるものは何か。それは今描いているゴールの高さなのだ。

 

成、おめでとう。
君の幸せを願っているよ。

 
井上雄彦 
11/19/2007